続・夕陽のガンマン レビュー



【ストーリィ】

南北戦争という、アメリカにとってはもっとも痛手だったといわれている内戦を舞台に、すこぶる調子のイイ奴ブロンディ(クリント・イーストウッド)大悪党エンジェル(リー・ヴァン・クリーフ)したたかに世を渡り歩く卑劣漢トゥーコ(イーライ・ウォーラック)の3人が20万ドルの強奪をめぐって繰り広げる壮大なるサバイバルバトル。

【解説】

いわずと知れたセルジオ・レオーネのマカロニ超大作です。先ずそのスケールの大きさは見るものを圧倒します。舞台となるセットを含め、上映時間2時間半あまり(オリジナルは3時間以上)という桁外れの進行にも、まったく飽きがこない作りです。

この作品を料理に例えるならば、いったい何が出てくるか分からない、闇鍋的なスリリングさと面白さがあります。鍋料理は、さまざまな食材の旨味が引き出されてからこそ成立します。この作品はまさにそれなのです。

さてその食材となる主役3人です。

自分の手を汚す事無く油揚げをかっさらう、とんびの様にひょうひょうとした流れ者、ブロンディ役のクリント・イーストウッド。彼は同じくレオーネ作品『荒野の用心棒』で華々しくデビューした後、続く『夕陽のガンマン』でそのキャラクターをしっかりと観衆に植え付けさせました。その彼が同じ様な流れ者のガンマンをこの大作でも演じます。ただし今回の彼は、なんとも捉えどころの無いガンマンとして登場します。その彼をどう味わうかは観客の好みといったところでしょう。

それから、まったく感情移入を受け付けない、徹底した悪役を演じる、エンジェルことリー・バン・クリーフ。彼に夕陽のガンマンのモーティマー大佐の面影を求めてはいけません。
今回の彼は冷酷な殺し屋としてのみ存在します。それ以上の存在であっては決していけないのです。観客は彼に対して十分な憎悪を持てるように演出してあります。
そうです。彼は元々悪役専門の俳優だったのです。まさに悪役俳優の面目躍如といったところでしょう。

もう一人、見事に卑劣漢を演じきった、トゥーコことイーライ・ウォラック。この作品において彼の役どころはまさにうってつけであり、混乱の世を生き抜き、そして目的を達成せんが為にありとあらゆる手段を通す、したたかなキャラクターを見せ付けます。

このブロンディとトゥーコの関係は、面白く可笑しく、時としてスリリングに描かれます。
そしてそこに入り込む第3の男・・・。モリコーネの音楽も、それぞれのシーンを盛り上げます。

とこの様に、さまざまなシーンがしっかりと頭にインプットされる様に作られているのです。

又この映画は、銃器マニアにとってもすこぶる美味しい作品です。彼らの使用する、コルト・ネーヴィーやレミントン・アーミィ。さらには、南北両軍の撃ちまくるカノン砲やガトリング砲。それらの火器が鍋の中で所狭しとはじける様は十分に楽しめます。おそらくは、その時代に使われたであろうこれらの銃火器。ただし、そのほとんどはブラックパウダー銃と呼ばれる、弾丸と火薬を別々に込める銃の筈ですが(もちろん使われたライフルの中にはカートリッジタイプもあった)おそらく展開のスピードに対応すべく、主要3人の使用する銃は、すべてカートリッジタイプにわざわざ変更してあります。そしてこのカートリッジという隠し味が、最後の緊迫する決闘の中で重要な役を担うのです。

さて、この作品で描かれる南北戦争とは何か。さしたる意味はありません。
レオーネ自身これを反戦的なメッセージなどとは、これっぽっちも考えてなかったでしょう。

ではなんだったのか?鍋にぶち込んだ、単なるスパイスです。

そもそも戦争なんてものは、お互いはそれぞれが、自分達が一番正しいと思ってやってるものです。結果的には「勝てば官軍、負ければなんとやら」ってやつですからね。
全世界の歴史を見れば一目瞭然です。

このスパイスが、もし、本当にもし、レオーネからのなんらかのメッセージだった、とするなら、戦争に対しての(むしろ戦勝国に対しての)ちょっとした皮肉だったのかもしれません。そう、あるとしたら皮肉でしょう。無ければ、ただの盛り上げ役でしかないでしょう。

そしてこのスパイスのぶち込まれた鍋の中を、3人の悪党共は暴れまくるのです。

煮ても焼いても喰えない!悪役。エンジェル:リー・バン・クリーフ。
劇中最も美味い食材となったテゥーコ:イーライ・ウォラック。
結果的にとんでもない大悪党だった(悪役ではない)ブロンディ:クリント・イーストウッド。

彼らは南北戦争という、南北両陣営の利害関係が絡み合った(まさに戦争らしい戦争ですね)
そして文字通りこのRival達がRiverを挟んで徹底的に睨み合う、いわばこの世の地獄を、そんなことにはまったくお構いなしに、そう愉快なくらいに無視しまくって、あるいはとことん利用しまくって、我が私欲の為だけに突っ走ってくれたのです。

これほどに愉快な作品は無いでしょう。まさに痛快なのです。ザマーミロなのです。
娯楽映画とはそんなものです。

現在では気が向いた時に、DVDなりビデオなりで、この作品を存分に楽しめます。
そう、お気に入りの酒でも片手に気楽に楽しみましょう。気楽にね。
あああああ〜・・・


By ブラックパウダーひろ